摂食障害を抱えながら生活するのは患者さんにとってもご家族にとっても大変なことですが、身近な人に悩みを打ち明けたり、相談したりすることが難しく、孤独感にさいなまれることもあるかもしれません。そんな時に、同じ疾患や問題を抱える人と情報を交換し、支えあう場が役に立つことがあります。摂食障害についても各地に、「家族会」「当事者(患者)会」「自助グループ」などと呼ばれるグループがあり、少しずつ増えつつあります。
家族会には、医療機関や保健所などの専門施設が運営するもの(サポートグループ)と、家族自身が主催するもの(自助グループ)とがあります。活動内容は、摂食障害についての学習や情報共有、参加者同士の自由な交流、テーマやルールを決めた話し合いなどが多いようです。専門家が主催する会では、講義などの学習が多く、家族が主催する会では自由な交流が多い傾向にありますが、会の進め方や開催時間・頻度などはグループごとに様々です。家族会に参加することで、共感や安心感を得られ孤独感が和らいだり、情報や知識を得ることで患者さんへの対応が楽になったりする可能性があります。
患者さんが集まる会は、「自助グループ」と呼ばれることが多いのですが、こちらも専門家がサポートしているものと、患者さんだけの力で運営しているものがあります。最近では顔を合わせたミーティング以外にも、インターネット上で交流や情報交換を行う会も出てきています。
家族会に参加する意義は、摂食障害への理解が深まる、回復の目標や見通しがもてる、患者へのケアスキルが高まる、心理・社会的なサポートが得られるなどが報告されています1)。一方で、家族会運営には一定のルールややり方があるわけではなく、運営方針や雰囲気はグループによって様々ですので、参加を考える場合は、主治医や地域の保健所や精神保健福祉センター・インターネットなどで情報を収集すること、家族会が自分にあっているかどうかを見極めることが大切です。
自助グループへの参加に関しては、意義とともにいくつかの留意点も指摘されています。意義と留意点について表にまとめてあります。自助グループへ参加を考える際は、これら意義と留意点のバランスを考え、今の自分が参加するのが適切かどうかをお決めいただくことが大切です。
家族会や自助グループへの参加をお考えの場合、現在通院中の方は、会へ参加することについて、主治医とよく相談する必要があります。
- 摂食障害の知識を増やし、考え方や対応法などを検討できる
- 実体験を通した情報を得、多角的に病気を考えることができる
- 「自分だけではない」と知り、スティグマ(病気であることを恥に思う感覚)を軽減し治療に向かうことができる
- 他のメンバーを観察することで、羞恥や自責感を感じていた考えや行動を「病気の症状」だと理解できる
- ありのままの自分を受け入れる契機となることができる
- 自助グループがオリエンテーションの役割を果たし、発症初期の不安が和らぐことがある
- 安心感のある居場所や外出のきっかけとなることがある
- 仲間と語り合い認め合うことで無力感や孤立感を克服することができる
- 個人的な体験を他のメンバーが受け入れて、励まし、援助し合うことができる
- 回復者の話を聞いて回復の意欲が促進されることがある
- 病気が長期化した場合には、共感や励ましが支えになる
- 啓発など社会に対する働きかけを行うことができる
- 身体症状が軽視され、症状が悪化、遷延することがある
- やせの競い合い、体重の偽り方や食べ物を隠す方法が広まることがある
- グループからこぼれ落ちた人が非難されることがある
- グループのリーダーが援助を受けにくい
- 他者との関係を苦手とするものが多く対人関係で傷つくリスクがある
- グループの考え方に偏りがある場合に、治療を受けている専門家との信頼が損なわれることがある
- グループへの参加のみによって救われると思い込むことがある
- グループの参加にのめりこみすぎて、適切な社会資源に無関心になることがある
- 1)小原千郷 精神科 38(3):313-318、2021
- 2)生野照子 精神科 28(1):35-39、2016
- 3)生野照子 こころの科学 112:88-93、2003