摂食障害では、食べた物を自分で吐いてしまったり、下剤や利尿剤などを不適切に過剰に使用(乱用)したりするのは、しばしば見られる症状です。神経性やせ症と神経性過食症のどちらでも見られることがあります。自分で吐いてしまうこと(自己誘発性嘔吐)、下剤や利尿剤の乱用は、「排出行動」と呼ばれ、過食しても体重が増えないようにしようとするという意味の「代償行動」の一つです。「浄化する」という意味の「パージング」という言葉も知られています。
さて、これらの排出行動は、食べた物を排出するだけなので、身体には何の影響も与えないように見えるかもしれません。しかし、実際には、排出行動を繰り返すと、身体へのダメージが生じます。まず、頻繁に嘔吐すると、胃酸の影響で歯の表面が溶けて痛みが生じたり、口腔内の炎症が多くなったりします。また、胃酸や腸液が失われると、体内のカリウムが失われ、低カリウム血症になります。これは、心臓に影響を与え、不整脈などが生じることも珍しくありません。また、排出行動により次の過食衝動が起こりやすくなり、悪循環が生じます。
排出行動は、単に我慢しようとしてもなかなかコントロールできません。日中は絶食で夜中に過食・嘔吐というようなパターンも多いので、治療では、排出行動のコントロールは、食事や睡眠のリズムを規則正しくするところから始めます。過食をしてもすぐ吐くのではなく、30分は吐かないようにするなど、過食と排出行動の間の時間をあける工夫も役に立ちます。また、自己嫌悪や怒りなどの気持ちが引き金で過食が生じ、その後排出行動が生じることが多いので、どのような状況で嘔吐することが多いかを自分で振り返る認知行動療法なども用いられます。嫌な気分をすぐ過食や排出行動で発散するのではなく、他の気分転換法を考えるのも有用です。必ず生活全般を見直すようにします。下剤や利尿剤の量を減らすには入院した方が良い場合もあります。
- 1. 食事や睡眠、活動などの生活リズムを整える
- 2. 過食と排出行動の間の時間をあける工夫をする
- 3. 過食や排出行動以外の気分転換の方法を工夫する
- 4. 心理的問題の解決にも取り組む