神経性やせ症・神経性過食症の経過についてはこれまでに複数の研究が行なわれています。それらの研究をまとめて解析したところ、神経性やせ症・神経性過食症のいずれも、約半数は回復し、約3割は一部の症状は残るけれども改善していたと報告されています(表)。いずれの場合も、長く追跡すると回復例が増えていました。神経性やせ症、神経性過食症ともに、慢性化、死亡の転帰をとる患者もいますが、長年たつと回復例が増えていくことから、回復するためには、あきらめずに治療を継続していくことが大切です。
注:いずれも、追跡期間が6ヶ月から12.5年までの様々な研究の結果をまとめたもの。粗死亡率は年齢調整をしていない1年あたりの死亡率。
摂食障害では、身体合併症による死亡も重要な問題ですが、自殺による死亡も重要な問題です。摂食障害の自殺による死亡率に関する報告では、神経性やせ症の自殺による死亡率は、1年につき1000人あたり1.24人で一般人口の31.0倍(標準化死亡比による)、神経性過食症では、1年につき1000人あたり0.30人で一般人口の7.5倍(標準化死亡比による)と報告されています。精神疾患の中では、統合失調症、うつ病、双極性障害、物質依存に次ぎ、自殺による死亡率が高いことが知られており、自殺による死亡にも注意を払う必要があります。
死にたい気持ちが強くなった時、自殺をしたいという気持ちを抑えることが難しくなった時は、周囲に助けを求めることが大切です。周囲に助けを求めることができる家族や友人がいない場合は、全国各地の「いのちの電話」などで電話相談することもできます。いのち支える自殺対策推進センターのホームページには、全国各地の相談窓口一覧が掲載されています。現在、医療機関で治療を行っている方は、かかりつけの医療機関にご連絡ください。かかりつけの医療機関がない場合は、お近くの精神科の医療機関を受診すると良いでしょう。
- 1)Steinhausen HC. Am J Psychiatry 159: 1284-1293, 2002.
- 2)Steinhausen HC, Weber S. Am J Psychiatry 166: 1331-1341, 2009.