本事業での活動

摂食障害全国支援センターの
活動のご紹介

摂食障害全国支援センター(全国支援センター)は、摂食障害支援拠点病院の統括機関として国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所行動医学研究部に事務局が設置されています。全国支援センターでは次のような活動をしています。

① 全国摂食障害対策連絡協議会(協議会)開催
摂食障害の専門医師、支援拠点病院のスタッフ、厚生労働省職員からなる協議会を開催し、事業の計画立案と評価を行っているほか、摂食障害の医療の現状や課題、対策を議論しています。

② 支援拠点病院との連携
支援拠点病院との連携会議を開催して活動状況や課題について情報交換し、必要な対応を話し合っています。

③ 情報ウェブサイトの運営
ホームページで事業の活動を紹介し、報告書を掲載しています。「摂食障害情報ポータルサイト」を運営し、一般専門職向けに摂食障害について、対処、治療、支援、研修、研究等の情報の発信をしています。

④ 相談事例の収集と解析
支援拠点病院での相談事例を収集し、分析しています。各地域での患者様やご家族、医療の実態を把握するとともに、相談支援者の手引きや、治療支援体制のモデル作成のための資料としています。

⑤ 研究や研修
主に厚生労働省より研究費の助成を受けて病院、学校、保健所等での実態の調査を行ってきました。また、医療機関や関係機関の連携の指針、治療プログラムの開発の研究を行っています。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所では毎年、摂食障害治療研修を開催しています。

摂食障害全国支援センターの活動のご紹介

摂食障害支援拠点病院の
活動のご紹介

宮城県摂食障害支援拠点病院

宮城県摂食障害支援拠点病院は国と宮城県の事業として平成27年10月、東北大学病院心療内科に設置されました。コーディネーターを配置し、電話、メールにより患者様、ご家族からの相談に応じ、助言や医療機関の紹介等を行っています。患者様と接する医療、教育、職場関係者からの相談にもあたっています。その結果、長年にわたり医療機関を受診することのなかった重症患者を受診につなげ、発症間もない患者様を早期治療に結びつけています。

摂食障害に関する正しい知識の普及啓発を目的に、市民公開講座、家族教室を開催しています。また、インターネットホームページ、Facebookページを開設して情報発信しています。啓発ポスター、リーフレットの制作と配布も行いました。相談者の多くは、インターネットやポスター、リーフレットを通じてセンターの存在を知ったと伺っています。

医療関係者対象とした研修会を開催しています。参加者からは正しい知識が得られ、理解が深まったとの声が寄せられています。養護教諭を対象とした研修会も開催し、学校現場で患者様の早期発見、早期治療に結び付ける成果を上げてきました。県内の主要な医療機関と連携ミーティングを開催し、宮城県内で適切な治療を行うことのできる医療機関を増やす活動を行ってきました。

相談、啓発、研修の活動を通して、宮城県摂食障害支援拠点病院は患者様、ご家族を支援し、地域社会の中で摂食障害の治療、予防を推進し、医療体制の充実を図っていきます。

千葉県摂食障害支援拠点病院

平成29年10月に千葉県摂食障害支援拠点病院(以下、当支援拠点病院)が開設されました。全国で4番目、首都圏としては初の支援拠点病院として稼動しています。主な業務は、患者様とそのご家族への支援、医療連携、摂食障害の啓発活動を通じて摂食障害の有効な治療連携モデルの確立です。当支援拠点病院の職員は併任の医師4名(国府台病院心療内科医師)専任のコーディネーター(非常勤看護師2名)専任の事務補助員2名(非常勤)の体制です。

当支援拠点病院の特徴は、以下の通りです。

① 首都圏としては唯一の支援拠点病院という事情もあり、相談件数は月50件前後と他の支援拠点病院に比べて多くなっています。平成30年度の相談者の居住地は千葉県40% 県外38%(東京都、埼玉県、神奈川県等)不明22%と多岐に及んでいます。

② 当支援拠点病院は国と千葉県から援助を得て、国立国際医療研究センター国府台病院に設置されています。平成30年の当院心療内科病棟の摂食障害患者様のべ入院数は、140余名と全国有数の規模です。この医療現場での豊富な臨床経験を基に、患者様やご家族のかかえる深刻な要望に応える運営を目指しています。

③ 平成29年に県内医療機関や行政との連携を強化するために、千葉県摂食障害治療研究会を当支援拠点病院、千葉大学精神神経科、国際医療福祉大学精神神経科、千葉県精神保健福祉センター等が中心となり設立しました。平成30年末までに研究会は2回開催され、千葉県内外の治療施設から毎回100名以上の治療者が参加して医療連携の在り方、今後の課題、有効な治療法の検討を行っています。

静岡県摂食障害支援拠点病院

神経性やせ症では、ときに命に関わるほどの身体合併症を有し、精神科では身体的に重症な患者様の治療は困難とされてきました。これを解決するため、浜松医科大学附属病院精神科神経科では、摂食障害支援拠点病院事業(拠点病院事業)の発足以前から身体管理を含めた診療プログラムを考案し、入院治療を行っていました。

拠点病院事業の発足により、身体管理を含めた診療プログラムを発展させ、医療機関同士の連携強化を図りました。つまり、栄養失調のために身体面の集中治療を要する患者様は精神科病棟を有する総合病院で診療し、急性期を脱した患者様や栄養失調の重症度が比較的軽微な患者様を精神科病院で担うというものでした。これら医療連携を実現するために、県内各所の医療機関で院内研修を行い、当拠点病院のプログラムを多職種の職員に理解していただきました。医療連携の実現により、患者様の「たらいまわし」を防ぎ、自宅に近い医療機関で治療が受けられるようになることが期待されています。

一方、患者様を支えるご家族に対しては、疾病を理解し、ご家族も治療者の一員となっていただけるように、複数の地域で家族教育を行っています。一般市民やゲートキーパーに対しては、早期受診・早期治療を目的に普及啓発活動を行っています。その結果、患者様やそのご家族・支援者、ならびに様々な診療科から発症早期での受診相談や紹介が増えています。

早期介入により外来通院のみで軽快することが期待されるため、早期治療の受け皿となる精神科や小児科の医師に対して外来診療に関する研修を行い、診療所を含めた外来診療の強化を図っています。また、発症予防の観点から、養護教諭等の学校関係者や産業医・職場のメンタルヘルス担当者に対する研修も行っています。

福岡県摂食障害支援拠点病院

福岡県摂食障害支援拠点病院(当支援拠点病院)は、九州大学病院心療内科内に開設され、以下の3つを業務の柱として活動をしています。

① 相談支援
電話、メール、面談で相談を受けています。患者様本人やご家族はもちろん、学校や職場、行政の相談窓口等で対応に苦慮している担当者からの相談もあります。受診に関する相談が最も多く、必要と判断された相談事例では症状に応じて適切な医療機関を紹介しています。他に、病気・治療、患者様への対応方法等についても対応しています。

② 医療機関等への助言・指導
当支援センターの特徴的活動ともいえる活動です。専門医を地域の医療機関に派遣し、摂食障害の病態や治療法、対応方法等について研修を行っています。また、行政や学校関係者からの研修依頼も増えています。

③ 普及啓発活動
県民向けに公開講座を開催し、摂食障害の理解を深める活動を行っています。ホームページ、Facebook等のウェブ媒体を活用した啓発も積極的に行っています。また、疾患啓発リーフレットを作成し、県内の各医療機関や小学校から大学までの教育機関に配布しています。

上記の活動によりいくつかの成果が得られています。県内での拠点病院認知度も上がってきたことから、早い段階で相談が可能となり、適切な医療機関につなぐことができています。実際、九州大学病院を受診した患者様は、小学生も含め10代の若年者が増加しています。福岡県で摂食障害を診察できる医療機関は、当支援拠点病院開設前に比べ大幅に増加したことから、患者様が医療機関へアクセスしやすい環境整備に寄与しています。

摂食障害は、早期発見・早期治療が重要です。躊躇せずにご連絡いただきたい。

石川県摂食障害支援拠点病院

石川県摂食障害支援拠点病院は金沢大学大学附属病院神経科精神科に設置され令和4年10月3日より活動を開始しました。全国で5か所目、日本海側では初めての指定となりました。活動の柱は下記の3点になります。

①電話相談事業
臨床心理士・公認心理師の資格をもったコーディネーターを配置し、診断の有無にかかわらず当事者や家族からの相談を受け付けます。また学校や職場、行政機関など範囲に制限を設けずに相談窓口を開放しています。受診に関する相談から関わり方のアドバイスなどにも対応します。

②啓発、啓もう活動
市民公開講座、養護教諭対象の研修会などを企画するとともに、ホームページやリーフレットなどを通して、摂食障害の理解を深めるための普及活動を行います。摂食障害は早期発見・早期介入によって治療期間を短縮させ、重篤化を予防することが可能です。講演会、研修会に関しての要望があれば是非、電話相談窓口などを通してご相談ください。

③地域医療ネットワークの構築
摂食障害にはさまざまな重症度、段階があり、それぞれ求められる医療のレベルや介入の切り口が異なります。あらゆるニーズに応えられるよう医療機関同士のつながりを強化し、全体として治療レベルの底上げを図っていきます。

まだ活動を開始したばかりですが、すでに多くの電話相談や研修会の依頼をいただいており、関心の高さやニーズの多さを実感しています。全国センターや各拠点病院とも連携し、摂食障害の早期発見、早期治療および支援体制・医療体制の充実を図っていきます。お気軽にご相談ください。

福井県摂食障がい支援拠点病院

コロナ禍で摂食障害を発症またはその前段階になっている若い世代が急増しているなか、福井県摂食障がい支援拠点病院は国と福井県の事業として、令和5年10月、福井大学医学部附属病院神経科精神科に設置されました。摂食障害治療支援コーディネーターを新たに配置し、地域の摂食障害患者の症状に早期に気づき、対応を行い、遅延なく急性期治療を進め、慢性期・回復期を支援するなど、摂食障害に対する総合的な対策を福井県地域全体に行っていくことを目指しています。

(1)相談支援: 摂食障害当時者およびその家族への専門的な相談、治療及び回復支援
(2)治療支援: 摂食障害診療を行う連携病院など医療機関等への助言・指導
(3)行政機関連携: 関係機関(精神保健福祉センター、保健所、市町等)との連携・調整
(4)研修: 医療従事者、関係機関職員、摂食障害当時者およびその家族への研修の実施
(5)普及啓発活動: 摂食障害当時者およびその家族、地域住民等への普及啓発
(6)地域協議会: 摂食障害対策推進協議会の運営
(7)集計整理: 協議会で定めた指標に必要な数値等の集計・整理

などを行い、当支援拠点病院から各医療機関・行政・福祉・教育機関へと拡げ、摂食障害当時者およびその家族の支援につなげていくことを目指しています。
当支援拠点病院のホームページやリーフレットでは、当事者の症状や苦しみをわかりやすいイラストで解説し、診断の分類や、年齢や身長別での肥満度やBMIからの重症度早見表にて、摂食障害の症状に早期に気づき、多くの方に理解を深めていただくことを期待します。また、日本摂食障害学会・日本摂食障害協会、摂食障害情報ポータルサイト、学校と医療のより良い連携のための対応指針などにもリンクし、早期に適切な対応へつながっていくことが願いです。